法律

行政書士と学ぶ相続人の確定 ~知っておきたい証明の方法

亡くなった親族に、前妻(夫)の間に子供がいた、実は隠し子が存在した...など相続時に知らない親族の登場があるなんてドラマの世界の話のようなことが実際に少なからず起きています。
離婚・再婚・ステップファミリーが一般化した現代では、今度どのような事例は増えてくるでしょう。
そもそも相続権が与えられる関係性はどこまでで、どのような場合になるのでしょうか。本記事では、相続人の確定方法から関係説明の解説をしていきたいと思います。

1.相続権があるのは誰?

被相続人(亡くなった方)のご主人または奥様は必ず相続人になります。では、その他に相続権があるのは誰なのか確認していきましょう。

第一優先順位 | 子供(先に子供が亡くなったら孫)

     いなければ⇩

第二優先順位 | 両親(先に両親が亡くなったら祖父母)

     いなければ⇩

第三優先順位 | 兄弟姉妹(先に兄弟姉妹が亡くなったら甥姪まで)

     いなければ⇩

ご主人、奥様のみが相続人となります。

[注意事項]

  • 養子は基本的に養母・養父と実母・実父の4人の相続権があります。養子に出されたからといって相続権は消えません。
  • 前妻・前夫との間の子供も相続人となります。中々難しい話ではありますが、事前に婚姻歴がないか?お子様はいなかったか?を確認しておきたい所です。

 

2.相続人の証明

それでは相続権があることを、他人(銀行や法務局)にどうやって証明したら良いでしょうか。
家庭内で知っていても対外的に証明できなければ意味がありません。身分関係を証明する戸籍謄本(現在の名称は戸籍全部事項証明書)を取得することで証明できます。
戸籍収集は相続関係によっては1箇所で済むようになりましたが、大半は時間が掛かります。余裕をもって進めましょう。

(1)戸籍謄本を集める

被相続人(亡くなった方)に関しては、生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本を全て取得します。通常5~6通ありますが、引越して本籍を変更したり、結婚や離婚を繰り返していた場合は、何通も発行されていることが多いです。余談ですが、昭和初期には分家や隠居などでもその都度発行されました。
相続人に該当する方に関しては、結婚などでその戸籍から抜けてしまった場合、現在生きている証明として戸籍謄本を取得してください。戸籍抄本(現在では戸籍個人事項証明書)でも構いません。
これらが集まることにより相続関係を証明することができます。

[注意事項]

  • 不動産をお持ちの方は、住所の証明書(住民票・戸籍の附票など)も取得してください。法務局には住所と名前が登録されています。戸籍では住所の記載がないので、たまたま同姓同名の人がお亡くなりになったかも?という疑念が残ってしまうからです。
  • 役所によっては戦争や大火災で焼失、保存期間が終わったので廃棄されている場合があります。廃棄証明書が発行されますので、手続きされる機関とご相談ください。

(2)戸籍謄本を取得できる場所は?

基本的には、本籍のある役所に赴くか郵送にて取り寄せます。郵送の際には手数料として郵便局で定額小為替を購入する必要があります。(最近はクレジットカードなど対応できる役所も増えつつあります。)
しかし、令和6年3月から戸籍謄本の広域交付がスタートし、日本中のほとんどの役所でどこが本籍であろうとも戸籍が取得できるようになりました。

[広域交付の注意事項]

  • 相続人本人が写真入り身分証明を持って窓口に行かないと発行できません。代理人は取得不可。奥様・ご主人様が代わりに行っても発行してもらえません。したがって平日お仕事の方は、われわれ専門家に依頼することをお勧めします。
  • 兄弟関係、住所に関する証明書は取得できません。未婚の兄弟姉妹、叔父叔母の際にも取得できません。この部分に関しては、これからの制度変更に期待するしか方法がありません。
  • 広域交付を行うにあたってシステム上などの問題もあり、対応していない役所もあります。地方の場合は未対応の場合もございますので、確認が必要です。

 

3.手続きを効率化(法定相続情報証明制度)

遺産相続の手続き先が多いときは「法定相続情報一覧図」を作成しましょう。
「法定相続一覧図」とは戸籍一式を1枚にまとめた証明書です。相続人が誰なのかを証明でき、銀行、法務局、保険、年金の手続きなどで戸籍謄本の代わりに使えます。
こちらを使用すれば、手続きごとに何セットも戸籍謄本を取得する必要がありません。銀行の行数分だけ戸籍謄本を取得してみたら手数料がびっくりする金額だった、ということも避けられます。(相続手続きの負担を減らしてくれる制度のことを、法定相続情報証明制度といいます。)

  • 発行場所は法務局 どこの法務局でも申請できるわけではありません。不動産のある管轄の法務局、申請人の住所を管轄する法務局などになります。詳しくは法務局ホームページをご参照ください。
  • 発行費用は無料 必要な数を多めに発行しておくことをお勧めします。
  • 5年以内なら再発行可能

【作成方法】

  1. 「法定相続情報一覧図の原稿」という被相続人と相続人の必要事項を記載した家系図のようなものを作成します。住所は希望者のみなのですが、入れておくことをお勧めします。
  2. 申請書を作成し、集めた戸籍謄本一式、1の「法定相続情報一覧図の原稿」と一緒に法務局へ申請します。
  3. 1~2週間程度で法務局の認証印入りの証明書が発行されます。

その他状況に応じて必要な書類が必要になる場合がございます。
必要書類にあたっては、見本が法務局ホームページにありますので、参考にしてください。
ご自身での用意が難しい場合はお気軽にお問い合わせください。

 

まとめ

いざ相続の問題に対面したときに「知らない相続人が現れた!」とならないように、下記の手順で確認することをおすすめします。

①相続人になる方(推定相続人)は事前に確認しておきましょう。

②戸籍収集は相続関係によっては1箇所で済むようになりましたが、大半は時間が掛かります。余裕をもって進めましょう。

③手続き先が多い時は法定相続情報一覧図を作成しましょう。

相続の問題は誰しもが一度は考えなくてはなりません。意外と身近な割に手続きが複雑になりやすい問題でもございますので、もしお困りのことがございましたら、是非当社へご相談ください。

 

(筆者:行政書士 深野友和)

行政書士と学ぶ相続人の確定 ~知っておきたい証明の方法 – the士業サイト (the-shigyo.com)

関連記事